
鳩山会館を巡るValkyrieの旅は、いよいよ中盤へ。
ここからは、夢ノ咲学院という枠を超え、より広い世界、より高い次元へと羽ばたいた彼らの「進化」の軌跡を辿ります。
ここからは、夢ノ咲学院という枠を超え、より広い世界、より高い次元へと羽ばたいた彼らの「進化」の軌跡を辿ります。
「再生の物語」を経て、二人の芸術はどのような変貌を遂げたのか。
複雑さを増す衣装の造形と、深まる二人の絆にご注目ください。
複雑さを増す衣装の造形と、深まる二人の絆にご注目ください。

No.5 ネバーランド衣装 ── 地図なき旅路と、師の悔恨
活動が本格化し、衣装の構造もより立体的・建築的になってきた時期の一着。
深い紫と黒を基調とし、重なり合うドレープやプリーツが美しいこの衣装は、「日本ネバーランド杯」で着用されたものです。
深い紫と黒を基調とし、重なり合うドレープやプリーツが美しいこの衣装は、「日本ネバーランド杯」で着用されたものです。

一見して分かる通り、その造形美には並々ならぬこだわりが見られます。 しかし、この完璧な衣装を前に、音声ガイドの宗の声はどこか沈んでいました。
「時間を置いてようやく気づいたのだよ。 影片は僕を模倣していたのではなく、手本にし、彼なりに試行錯誤していたのだと」

「なのに僕は、それを理解できぬまま、山の頂きを指して登れと命じていた。 地図も助言も与えずにね」
「地図も助言も与えずに」。 返礼祭を経て、宗に従うだけの「人形」から意志を持つ「人間」へと生まれ変わったみか。

そんな芸術家として自立しようともがくみかに対し、高い要求だけを突きつけていた当時の自分。 目の前の衣装が精緻であればあるほど、その裏にあったコミュニケーションの断絶や、宗自身の孤独な指導者としての苦悩が浮き彫りになります。

宗は、みかがどういう意図でこの衣装を展示しようと思ったのか、と気にかけながらも、「あの子のことだ。深い意味などなく、ただみんなに綺麗なものを見せたかっただけかもしれないね」と、一旦自己完結し、この話は終わります。
No.6 Acanthe衣装 ── 咲き誇る「芸術」と、自ら選んだ「紫」
No.5で宗が「地図を与えなかった」と悔やんでいたのに対し、まるで時を超えてその答えを示すかのように。
続くNo.6の衣装の前では、みかの晴れやかで、そして力強い言葉が響き渡りました。
続くNo.6の衣装の前では、みかの晴れやかで、そして力強い言葉が響き渡りました。

曲のタイトルは『Acanthe』。 みかはまず、そのタイトルの意味を嬉しそうに教えてくれます。
「『Acanthe』ってなにか知っとる? 花の名前でな、花言葉は『芸術』とか『技巧』なんやって。・・・俺はまだまだ知らんことだらけで、毎日が勉強や。自分にはなんもない分、これからぎょうさん詰め込めるってことやし、前向きに頑張るわ」

かつては「自分はからっぽ」だと嘆いていたみかが、今は無知を「これから詰め込める可能性」として前向きに捉えている。
その声の明るさに、まず胸を打たれます。
その声の明るさに、まず胸を打たれます。
そして語られるのは、この楽曲がValkyrieにとって決定的な「分岐点」であったという事実です。
楽曲のMV制作において、「人形が命を吹き込まれて人間になる物語にしたい」と提案したのは、他でもないみか自身でした。
楽曲のMV制作において、「人形が命を吹き込まれて人間になる物語にしたい」と提案したのは、他でもないみか自身でした。

「時間もないのに、お師さんは受け入れてくれてな。あの時は嬉しかったわ」
宗の完璧な世界に、みかが初めて自分の意志で色を塗り、宗がそれを受け入れた瞬間。
No.5で宗は「地図を与えなかった」と悔やんでいましたが、みかは地図がないからこそ「自分で考えて、歩く」ことができ、その結果、師の隣に提案できるほどの「人間になれた」と感謝しているのです。
No.5で宗は「地図を与えなかった」と悔やんでいましたが、みかは地図がないからこそ「自分で考えて、歩く」ことができ、その結果、師の隣に提案できるほどの「人間になれた」と感謝しているのです。

衣装に目を向けると、黒地に映える鮮やかな「紫」が印象的です。 宗の「赤」と対をなすこの色について、みかは自身の変化と重ねて語りました。
「紫って、昔やったら選んでなかった色やろなぁって、改めて思うわ。Valkyrieに加入した頃、俺はお師さんの人形やった。お師さんに言われたとおりに動くのが幸せで、それで十分やと思っとった」
かつては糸で操られるだけの至福の中にいた彼。しかし、彼はその安寧を捨て、茨の道を選びました。

「でも一緒にいるうちに、お師さんは俺を人間にしてくれたんよ。自分で考えて、歩いて、選べるように」
「自由っていうのは難しいけど、それ以上に温かくて嬉しいもんやね。だって今は、自分の足でお師さんの隣に立ててるんやからな」

「自由は難しいけど、温かい」。 この言葉の重み。 自らの足で立つ困難を選び取ったみかが、今、宗の隣で誇らしげに纏う「紫」。 それは単なる衣装の色ではなく、彼が手に入れた「意志の色」そのものでした。 この『Acanthe』の衣装は、Valkyrieが「操り手と人形」から「二人の芸術家」へと進化を遂げた、記念碑的な一着なのです。
No.7 マキナ衣装 ── 仮想世界と現実の「ちぐはぐ」な調和
格式高いNo.6から一転、視界に飛び込んできたのは、ネオンカラーと歯車が踊るパンクな衣装。Valkyrieの歴史の中でも遊び心溢れるこの衣装について、みかは開口一番、現代っ子らしい話題を投げかけます。

「みんなはVRって体験したことある? 『マキナ』が生まれたきっかけは、『テストワールド』っていう仮想世界のゲームなんよ」
まさかの誕生秘話。みかがゲーム内での生活に夢中になりすぎて、「お師さんの逆鱗に触れた」という失敗談まで飛び出しました。

衣装をよく見ると、黒をベースにしつつも、目の覚めるような色のフリルや、幾何学的な模様、そして無数の歯車パーツが散りばめられています。 みかは、この少し「ごちゃっとした」デザインについて、「お師さんよりゴチャゴチャつける癖とかは、なんや自分っぽいかな〜」と分析します。

そしてガイドの最後、自身の不器用さを嘆くみかに対する宗の言葉が、この衣装の全てを肯定していました。
「お師さんが言うには、『気が利く俺は、俺やない』らしいし。 んあ〜、難しい問題やわぁ」

「気が利く影片は、影片じゃない」。 それはつまり、「その不器用で、まっすぐで、少しちぐはぐな感性こそが、今のValkyrieには必要なのだ」という、宗なりの愛の告白ではないでしょうか。

No.8 レゾンデートル衣装 ── 白と黒、二人で描く「一枚の絵」
中巻の最後を飾るのは、No.8『レゾンデートル』。 会場の中でも一際異彩を放つ、大胆なアシンメトリーのデザインです。

この衣装の前では、二人の微笑ましい「小競り合い」を聞くことができました。
宗:「ここで一つ主張しておきたいのだけれど、僕の衣装の方が多く展示されているのは、偏に影片のせいだからね!」
みか:「んあ!? こんなところで言わんといてぇな! ・・・みんなもお師さんの衣装が見られて嬉しいやんなぁ? なぁ?」
どうやら、今回の展示ラインナップにはみかの強い要望があったようです。 「みんなも見られて嬉しいやんなぁ?」と、私たち観客を味方につけようとするみかの愛嬌に、思わず口元が緩みます。

しかし、話題がこの衣装の核心に移ると、空気は一変して芸術家の顔へ。 見る角度によって「黒」にも「白」にも見えるこの不思議な衣装について、宗はこう語ります。
「パフォーマンスでもその対比を意識していたのだよ。 二人で立つことでようやく一枚の絵が完成する」

白と黒。光と影。 かつては「主と従」だった二人が、今や対等の存在として背中を預け合い、「二人で立つことで完成する」域に達したことを示しています。

「『レゾンデートル』とは、フランス語で『存在意義』だ。 僕たちValkyrieに相応しいだろう?」
互いが互いの「存在意義」であると高らかに宣言するこの衣装。 「二人で一つ」というValkyrieの概念そのものを形にしたかのような、圧巻の造形でした。
【中巻 結び】広がり続ける「芸術」の地図
迷いの森(ネバーランド)を抜け、自立の紫(アカンサス)を纏い、電子の迷宮(マキナ)で遊び、白黒の対比(レゾンデートル)で存在を証明する。 中盤の4着を見て痛感するのは、Valkyrieの世界が驚くべきスピードで拡張していることです。

さて、次はいよいよ展示のクライマックス。 「新衣装」と、全ての始まりである「旧Valkyrie衣装」が待っています。 そこで私たちは、ある「色」の真実と向き合うことになります。
▶︎ 【下巻】傑作のフィナーレ、そして原点へ(No.9〜11)へ続く