【考察】MDU VS Valkyrieが残した光と深淵、トーナメントの行く末

【考察】MDU VS Valkyrieが残した光と深淵、トーナメントの行く末

勝敗の向こう側で、二つのユニットは何を得たか。そして迎える今後の衝突予想。

いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。
​ATTENTION​
※本記事はメガスフィア・マッチ「MDU VS Valkyrie」、『BUBBLE GUM DANCE』、小冊子『MELLOW DEAR US Chocolate Assort』等の重大なネタバレを含みます。
※公式描写をもとにした筆者個人の考察を含みます。作中で明示された事実と、そこから広げた解釈を分けながらお読みいただければ幸いです。
メガスフィア・マッチ一回戦、MELLOW DEAR US対Valkyrie。
ライブ会場のファン投票と、全世界のオンライン視聴者投票。その二つを合わせた「合同投票」の結果、勝者として名前を呼ばれたのはMELLOW DEAR US(以下、MDU)でした。
圧倒的な技術。観客を一瞬で熱狂させる力。そして、どれほど苛烈な舞台でも決して崩れない完璧さ。MDUが世界最高峰のアイドルであることを、改めて見せつけられた一戦だったと思います。
けれど、物語を最後まで読み終えたあと、私の胸に残ったのは、勝者を称える爽快感だけではありませんでした。
​勝ったはずのMDUは、なぜこんなにも傷ついたままなのだろう。​
そして——。
​負けたはずのValkyrieは、なぜあんなにも何ひとつ失っていないように見えるのだろう。​
この戦いで本当に交わされたものは、勝ち星ひとつではありません。
今回は、MDUとValkyrieがこの一戦で「真に得たもの」、光に触れてもなお残った「深淵」、そしてトーナメント表に隠されているかもしれない物語上の仕掛けについて考えていきたいと思います。
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第一章 勝者と敗者が、それぞれ持ち帰ったもの

MDUの勝利——ファン投票が選んだもの

会場とオンラインの票を合算した結果、MDUはValkyrieを破りました。
世界水準の技術。大衆が求めるものを瞬時に見抜く感覚。それを会場全体の熱狂へ変える力。MDUの強さが今回のルールと見事に噛み合い、より多くの票を引き寄せたのです。
そしてValkyrieもまた、MDUという途方もない強敵に押し上げられるように、自分たちだけでは辿り着けなかった舞台へ到達しました。
ファン投票が記録した一つの勝敗。その内側には、​​勝敗だけでは測りきれない、異なる二つの到達点​​がありました。

Valkyrieが得たもの——「二人の芸術」が生まれた夜

Valkyrieがこの戦いで得たものは、あまりにも大きなものでした。
みかは長い間、自分の胸の底に埋めてきた舞珠との過去を、ついに宗へ打ち明けます。
あの頃の恐怖。罪悪感。自分でも持て余してきた、醜く、危うく、それでも確かに自分だけのものだった感情。
かつてのみかなら、それを「Valkyrieの芸術には不要なもの」として隠し続けたかもしれません。宗の望む美を完璧に再現する人形であろうとするなら、自分だけの傷など、舞台へ持ち込むべきではなかったからです。
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けれど宗は、それを切り捨てませんでした。
みかを自分の所有物でも、指示どおりに動く人形でもなく、​​ひとりの人間、ひとりの芸術家として受け止め、その感情をValkyrieの表現へ組み込んだ。​
宗の芸術へ、みかにしか生み出せない傷と衝動が注ぎ込まれる。
二人の異なる魂がぶつかり、新しい「二人のValkyrie」が立ち上がった瞬間でした。
結果として彼らは投票に敗れます。
それでも、舞台で表現しきったものの価値は、敗北によって一欠片も損なわれませんでした。
誰かに選ばれなかったからといって、自分たちが信じた美が消えるわけではない。
​敗北してなお、ValkyrieはValkyrieであり続けた。​
その揺るがなさこそ、MDUの物差しの外側で輝き、ジュイスの目を奪ったものだったのではないでしょうか。

舞珠が得たもの——値札のつかない自分を、覚えていた人

MDU側で最も大きく動いたのは、やはり舞珠でした。
彼は、みかがサーカス時代の自分を覚えていたことを知ります。
みかが覚えていたのは、失敗し、落下し、壊れかけていた舞珠だけではありません。幼い自分の手を引き、鬱屈した日々へ光を差したヒーローとしての舞珠と、夢のようなサーカスでした。
舞珠自身は、特別なものを何ひとつ持たず、失敗した自分には価値がないと考えています。けれどみかにとって、大玉乗りの失敗によって、それまで舞珠やサーカスから受け取ったものまで失われるわけではありませんでした。
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​成功できなかったあの日にも、舞珠はすでに、みかにとって忘れられない人だった。​
それを、何年もの時間を越えてみかは伝えてくれたのです。
二人は過去の事故と恐怖だけで結ばれた関係を越え、連絡を取り合い、共に美術館へ出かける約束を交わします。
かつて舞珠が幼いみかの手を引いたように、今度はみかが、舞珠を自分の知らなかった世界へ案内しようとしている。
傷は残ったままです。それでも、一度離れた二人が再び出会い、「また話そう」とまで言えるようになった。その小さな一歩が、どうしようもなく尊く感じられます。

ジュイスが得たもの——命じられていない「眩しさ」

そしてもうひとり、静かに揺らいだのがジュイスでした。
『BUBBLE GUM DANCE』で明かされたとおり、ジュイスはZK財閥の教育によって「アイドルを偏愛すること」を課されています。
彼にとってアイドルへの愛は、最初から自由な感情ではありませんでした。生き延びるために果たす義務であり、完璧に演じなければならない役割です。
かつて彼の道を照らしていたのは、心からアイドルを愛し、幸せそうにアイドルであろうとした善秀——現在のナイスでした。
しかし、ZK財閥が頂点に立つ一人としてジュイスを選んだことで、善秀はアイドルを辞め、プロデューサーになった。
ジュイスは、自分が「アイドルの善秀を殺した」と思っています。
それ以来、彼にとって完璧なアイドルであり続けることは、栄光ではなく罰になりました。
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そんなジュイスが、宗の生き方を「眩しい」と感じた。
宗へ向いたその視線は、ZK財閥に割り当てられた偏愛にも、ファンへ返す営業上の愛にも、ナイスの指示にも属していないように、私には見えます。
​ジュイスは、誰にも命じられずに、宗の生き方へ目を奪われたのです。​
自分の心が勝手に「眩しい」と感じてしまった。
さらに彼は、勝敗だけを根拠にValkyrieの価値を否定しようとする望見を制し、舞珠の抱える問題に対して、自分がリーダーとしてできることを考え始めます。
一回戦でValkyrieと戦えて良かった。
​命じられた「アイドルへの愛」の外側で、自分で選んだ関心を持ち帰った。​
それは救済には遠くても、ジュイス自身の心から始まった、小さく大切な一歩だったのではないでしょうか。

内側にあった情が、外へ向かう

MDUの四人は、以前から互いを生かし合ってきました。
小冊子では、ジュイスが舞珠の存在に救われ、舞珠が自ら命を絶とうとしたチトセを引き留め、チトセが行き場のない望見へ手を差し伸べています。
『BUBBLE GUM DANCE』でも、望見が不器用な方法でジュイスを案じ、ジュイスが望見の暴走を二人の約束によって止めるなど、彼らの濃く切実な繋がりが描かれています。
ただ、その情は、私たちがよく知る友情や優しさとは違う言葉——義務、支配、観察、介護、所有、依存——へ歪に変換されています。
Valkyrie戦では、MDUの内側へ偏っていたその熱が、外にいる誰かへ向かいました。
舞珠の持つ優しさは、みかとの新しい友人関係へ流れ込んでいく。
主人公やTrickstarとの交流で開き始めていたジュイスの窓は、勝敗や市場価値の外側にある宗の生き方へ向かって、もう一段大きく開かれる。
​閉ざされた部屋のなかで巡っていた感情が、Valkyrieとの激突によって、新しい形で外の世界と結ばれたのです。​

第二章 光に触れても、鎖はほどけない

ここまで書くと、この一戦は希望に満ちた救済の物語に見えるかもしれません。
けれど、光が差し込んだからといって、長い時間をかけて身体へ食い込んだ鎖が、すぐにほどけるわけではありません。
むしろ、明るい場所へ出たからこそ見えてしまうものがあります。
​彼らがどれほど深い場所から、あの完璧な笑顔を作っていたのか。​
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舞珠——自分のすべてに「値札」をつける

舞珠は、ナイスからMDUへの加入を持ちかけられた際、借金の肩代わりを条件として提示しました。
その契約によって、二人の間には債権者と債務者という、あまりにも不健全な力関係が生まれています。舞珠は恩義と借金によって、望まない仕事であっても簡単には拒めない。
サーカスを守るために差し出したものは、これから生み出す時間、身体、笑顔、働く能力——未来の自分そのものです。
そして恐ろしいのは、彼がそれを悲劇として扱っていないことです。
借金を返せる。サーカスを維持できる。ならば馬車馬のように働けばいい。
まるでショーの演目を一つ増やすような軽さで、自分を差し出してしまう。
みかは、失敗した舞珠にも価値があると示しました。
それでも舞珠自身は、観客から評価されない自分や、役に立たない自分に価値があるとは、まだ信じ切れていません。
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ファンとの危うい距離感についても同じです。
会員限定投稿の写真に映り込んだ情報から、ファンが舞珠の居場所を特定して訪ねてくる場面でも、彼は「危険な会員も把握し、上手に管理できている」と処理します。
完璧に綱を渡れている間は、危険など存在しないのと同じ。
そう信じる彼の足元で、綱は今も細いままです。
みかと友人になれたことは、間違いなく光でした。
けれどその光は、舞珠の傷を消してはいません。
ただ、いつか彼が綱から落ちたとき、​​失敗した自分を知っている誰かが、それでも名前を呼んでくれる可能性​​が、今回の出会いによって生まれたように思います。

ジュイス——「愛してる」と言えるのに、愛せない

ジュイスの鎖は、さらに残酷です。
彼は完璧なアイドルとして、笑い、歌い、ファンへ「愛してる」と囁くことができます。
身体は正しい角度で動き、声は正確に届き、客席から返ってくる悲鳴が、自分の演技が正解だったと教えてくれる。
けれど彼は、客席との間にある見えないガラスを必要としています。
ファンが見ているのは、中身を知らないまま夢を投影した「小鹿ジュイス」という理想のアイドル。
その理想に救われ、人生を懸けると宣言し、いつか勝手に失望して去っていく。
だから『BUBBLE GUM DANCE』の最後で、ジュイスは言います。
​「オレはアイドルを愛せない」​
愛を命じられ、愛しているふりを完璧に習得し、その言葉が商品として機能することまで知り尽くした人の絶望です。
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しかも彼は、アイドルの座を善秀から奪ったという罪悪感を抱えています。
自分が完璧であればあるほど、「本当は善秀が立つはずだった場所」を奪い続けることになる。
ファンから愛されれば愛されるほど、本物を追い出した偽物の自分が肯定されてしまう。
だから彼は、アイドルという存在を軽蔑することで、自分自身も同時に罰しているのではないでしょうか。
Valkyrie戦のあとも、この呪いはジュイスのなかに残り続けます。
その隣に、ジュイス自身の心から生まれた、宗への「眩しさ」が加わりました。
​愛せないままでも、自分で誰かを見つめることはできる。​
それは救済には遠い、ほんの小さな一歩です。
だからこそ、私はそこにどうしようもなく希望を感じてしまいます。

望見とチトセ——まだ光の当たっていない二つの深淵

そして、今回大きく踏み込まれなかった望見とチトセにも、それぞれの鎖があります。
望見は、他人を採点し、思いどおりに変形させ、支配することでしか相手へ触れられません。すべてを読み切れてしまう世界への退屈も抱えています。
チトセは、誰かの役に立てなければ自分には価値がないと思っています。わずかな失敗さえ許せず、自分を消すことで責任を取ろうとするほど、自己評価の土台が脆い。
ジュイスは偏愛という義務に。
望見は他者を支配できるかどうかに。
舞珠は観客から得られる対価に。
チトセは誰かの役に立てるかどうかに。
完璧に見える四人は、それぞれ異なる方法で、自分の価値を自分以外の何かへ預けています。
だからMDUは強いのだと思います。
正解を出し続ける限り、自分を保てるから。
そして同じ理由で、あまりにも危うい。
​一度でも正解を失ったとき、自分を支えるものが何も残らないからです。​
MDUは勝ちました。
けれど、傷の根からは、まだ誰ひとり救われてはいません。
その事実こそが、この勝利をこんなにも甘く、苦く、忘れがたいものにしているのだと思います。

第三章 「深い意味はない」は本当か——トーナメントが仕掛ける相互作用

ここまで振り返ったとき、改めて一つの疑問が浮かびます。
​なぜ、MDUの初戦はValkyrieだったのでしょうか。​
ジュイスが語った理由は、Valkyrieの実力が未知数だったこと、手応えのある相手を求めたこと、そしてナイスが高く評価する宗を相手にMDUこそ最高だと証明したかったことでした。
その選択を、物語の側からもう一度見つめてみます。
ジュイスは、選択に「深い意味はない」と言いました。
​けれど物語は、なぜジュイスにValkyrieを選ばせたのでしょう。​
各ブロックにMDUとの接点を持つユニットが配置されたトーナメント表
各ブロックにMDUとの接点を持つユニットが配置されたトーナメント表

各ブロックに置かれた「未回収の問い」

トーナメント表へ、MDU各メンバーに寄せられた他ユニットからの紹介コメントを重ねると、不思議な規則性が浮かびます。
全八組の初戦カードそれぞれで、MDUと接点を持つユニットが、きれいに片側ずつ配置されているのです。
初戦カードMDUとの接点がある側残された問い
Crazy:B VS 紅月Crazy:B燐音が知るジュイスと善秀の旧事務所時代/HiMERUが知る旧MDU
MaM VS fineMaM斑が調べようとしている、ジュイスと主人公(あんず)の幼馴染関係
Trickstar VS KnightsKnights泉と望見の商売敵関係/レオが覚えていないチトセとの過去
Special for Princess! VS Ra​*​bitsRa​*​bits友也が知るチトセのカードゲーム時代
UNDEAD VS EdenUNDEAD薫が目撃したジュイスと主人公(あんず)の近さ/零が知る姉妹校時代と「例の事件」前後の望見
流星隊 VS 2wink流星隊翠だけが知る、毎週パセリを買う普通のチトセ
ALKALOID VS SwitchALKALOID藍良が舞珠へ向けた憧れ/マヨイが知る、円果家で特別視されていた望見
MDU VS ValkyrieValkyrieみかが隠してきた舞珠との過去
トーナメントの枠は、くじで決めた順番に各リーダーが選んでいます。宗はfineから最も離れた枠を選び、ジュイスはその隣へ自ら入った。
キャラクター自身の意志が対戦を成立させ、その「本人らしい選択」が、物語上もっとも意味のある衝突を生み出す。この二つが重なることで、トーナメントは運命めいた形を帯びています。
事実、Valkyrie戦で回収されたのは、紹介コメントの時点から残されていた「みかはなぜ舞珠を見て不安そうな顔をしたのか」という問いでした。
ならばこのトーナメントは、単に最強のユニットを決めるだけの装置ではないのかもしれません。
​MDUの四人が抱える、まだ言葉になっていない傷へ、最も深く刃を届かせられる相手を一組ずつ差し向ける舞台。​
そう考えると、表の見え方が一変します。

回収された証言と、まだ開いている問い

紹介コメントには、すでに役割を果たした「証言」と、この先の物語へ続く「問い」が混在しています。
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Crazy:B側のコメントは、過去を説明する証言として読むことができます。
HiMERUは旧MDUのメンバーですが、舞珠は彼の離脱後に加入しています。コメントでも「もう終わった話」と、関係を閉じるように語っていました。
燐音が知っている善秀とジュイスの過去についても、『BUBBLE GUM DANCE』で当事者同士から大部分が明かされています。
HiMERUと燐音の言葉を重ねることで、旧MDUのメンバー交代と、ジュイスが善秀と過ごした時代の輪郭が浮かびます。Crazy:Bが敗退した現在、この二つは「回収された証言」として綺麗に収まります。
Trickstarとの交流も、ジュイスに「アイドル自身が楽しむこと」を手渡し、すでに一つの役割を果たしました。
そこから浮かぶ予想の鍵は、コメントの本数ではなく、​​その言葉の先に、まだ回収されていない問いが残っているかどうか​​です。

それでも、MDUを決勝候補と見る理由

ここから先の対戦予想は、MDUが勝ち進むことを前提にしています。
もちろん、決勝進出が約束されているわけではありません。それでもMDUを優勝候補の筆頭と考えるのは、紹介コメントの配置だけでなく、これまでの物語が彼らの規格外の強さを繰り返し描いてきたからです。
『Dynamic Diamond』で「世界最高峰のユニット」と呼ばれたMDUを初めて破るためには、『Mainstream Megasphere』でESの十五ユニット、総勢五十四人による大ステージが必要でした。それでも結果は僅差で、ナイスさえMDUの敗北を予想していませんでした。
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対して今回のメガスフィア・マッチは、一つのユニットと一つのユニットが戦い、会場と全世界から集まる票の合算で勝敗が決まります。世界規模の支持と、どんな舞台でも観客を熱狂させる技術を持つMDUにとって、これ以上なく強みを発揮しやすいルールです。
Valkyrie戦は、そんなMDUにも一歩間違えば敗れかねない緊張を与えました。だから、先の勝利を断定することはできない。それでも過去の戦績と大会ルールを重ねるなら、​​MDUが決勝まで勝ち上がる可能性を軸に、残るカードを読むことには十分な根拠がある​​と思います。

今後の有力ルートのひとつ——未回収の問いをたどる

その前提に立ったうえで、紹介コメントに残された問いをたどるなら、次のルートがひとつの有力な可能性として浮かびます。
​Valkyrie → ALKALOID → UNDEAD → Knights​
もちろん、これは各試合の勝敗を断定するものではありません。とりわけALKALOIDとSwitchの試合はまだ決着しておらず、ジュイスは【4piece】を通じてSwitchのメンバーの実力も把握しています。
それでも​​ALKALOID側には、MDUの内面へ接続し得る二つの糸​​が残されています。
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​藍良は舞珠の姿を見て、「すっごくラブい」「ダンスも上手」と、打算のない憧れ​​を向けました。自分の価値を観客から返される対価として捉えがちな舞珠に、同じアイドルから向けられる純粋な憧れがどう届くのかは、興味深い問いです。
一方、​​マヨイは、望見が円果家のなかでも「特別」だと家族から聞かされていました。​​ただし、マヨイが円果家の内情や望見の過去を具体的に知っているとは限りません。現時点で確認できるのは、その名を聞いただけで、視界に入ることすら恐れるほど円果家と望見を畏怖していることまでです。
さらに​​ALKALOIDとMDUには、ユニットの成り立ちをめぐる対比​​があります。
ALKALOIDも、最初から自分たちの意志だけで集まったユニットではありませんでした。それでも困難をともに越えるなかで、互いを必要な仲間として選び直し、自分たちなりのユニット像を築いてきました。
MDUにも、互いを案じ、本音を言い合い、支え合ってきた濃い繋がりがあります。しかし、その関係には義務や契約、与えられた役割も深く入り込んでいます。
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だから両者の対比は、繋がりの「有無」ではありません。
​外から与えられた関係を、自分たちの意志でどのように選び直すのか。​
かつて故郷の使命によって兄を連れ戻すために動いていた一彩もまた、仲間と過ごすなかで、自分自身が進みたい道を見つけたひとりです。ALKALOID戦が実現するなら、その歩みが、与えられた完璧を演じてきたMDUへ何を問い返すのか。そこに、この対戦ならではの相互作用が生まれるかもしれません。
​準決勝候補としては、UNDEADとの接点が目を引きます。​
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​零は海外にいた頃、夢ノ咲学院の姉妹校に通っていた望見と知り合っています。​​そして、「例の事件」を境に、話した頃とは雰囲気が大きく変わったと語りました。
事件の内容はまだ明かされていません。それでも零は、現在の望見だけでなく、その変化以前の姿を知る数少ない人物です。UNDEAD戦が実現すれば、望見自身が隠してきた過去へ近づく可能性があります。
ジュイスもまた、みずからの意志でUNDEADのパフォーマンスを個人的に見学しています。彼が「命じられた愛」ではなく、「自分で選んだ関心」によって少しずつ何かを得ていく過程を描くのであれば、UNDEAD戦はその線をさらに深める舞台になり得ます。
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加えて、​​薫はジュイスと主人公(あんず)の距離がやけに近いことを目撃​​していました。斑の言葉どおり二人が幼馴染なのだとすれば、ジュイスの過去へ触れるきっかけにもなります。
さらに見逃せないのが、​​晃牙とチトセの関係​​です。晃牙は幼い頃、カードゲームで一度も勝てなかった年上の相手へ強い憧れを抱いており、その相手が「冥府の虐殺者」と呼ばれたチトセであることが示されています。
過去のチトセを実際に知る晃牙は、現在の柔らかな「王子様」と、かつて大会で名を馳せた姿を結ぶ証人になり得ます。
望見、ジュイス、チトセ。それぞれに異なる接点を持つUNDEADは、MDUの過去を複数の方向から揺らし得る相手です。
​そして、決勝候補としてKnightsを考えます。​
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ここで鍵になるのが、​​チトセとレオの間に残された、「チトセは覚えているが、レオは覚えていない」過去​​です。
チトセはレオに「ぼくのこと覚えてないんだね」と声をかけました。しかし、それがいつ、どのような形で生まれた関係なのかは、まだ明らかになっていません。
もしそれがチトセのカードゲーム時代や、「神童」と評価されていた頃に結びつく出来事なら、誰かの役に立つことで自分の価値を保ってきたチトセと、才能ゆえに傷つきながらも仲間との関係を選び直してきたレオとの対面には、大きな意味が生まれます。
ただし、現段階では二人の才能の性質を対比できるだけの情報はありません。ここで重要なのは才能の真贋ではなく、チトセだけが覚えている出会いが、現在の彼に何を残しているのかです。
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泉と望見の間にも、未回収の接点があります。
​泉は望見を「俺の仕事を奪った商売敵」と呼び​​、望見が「ルール」を持ち出して話したことにも「チョ~うざぁい」と反発しています。ただし、奪われた仕事の内容や、二人の間に具体的に何があったのかは明かされていません。
奪われた仕事の分野も不明ですが、少なくとも芸能活動上の競合であり、泉が望見へ強い対抗意識を持っていることは確かです。
このルートが実現すれば、各試合でひとりずつ傷が暴かれるというより、舞珠、望見、ジュイス、チトセへ伸びる複数の糸が、対戦を重ねるたびに少しずつ結ばれていく構成になります。
もちろん、ALKALOIDがSwitchに、UNDEADがEdenに、KnightsがTrickstarに勝つことはまだ約束されていません。
だから​​この予想は、「この通りになる」という未来予知ではなく、紹介コメントに残された問いがどこへ向かうのかをたどった、ひとつの読み​​です。
もちろん、流星隊やMaMが勝ち上がる可能性もあります。
毎週パセリを買いに来る「ただの人」としてチトセを知る翠。ジュイスの幼馴染を調べようとする斑。どちらも、完璧なアイドルという外殻の下にいる個人へ触れられる人物です。
だからこそ、このトーナメントは勝敗予想だけで終わらせるには、あまりにも惜しい。
どのカードが実現しても、そこにはMDUの誰かが隠してきた「人間」が暴かれる可能性が残されています。
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制度上の所属から、傷を知る仲間へ

MDUはすでにESへ所属し、『BUBBLE GUM DANCE』ではナイスと主人公による共同プロデュースも始まっています。主人公の地道な戦略を認め、今後もプロデュースを任せるという信頼の端緒も生まれました。
メガスフィア・マッチは、その制度上の所属を、互いの傷へ触れられる個人同士の関係へ進めていきます。
​肩書きだけの仲間から、傷を知る仲間へ。​
同時に、MDUと戦うES側の価値観も揺さぶられていきます。
世界基準の実力と、大衆の欲望を熱狂へ変えるMDUの在り方は、戦うES側にも、自分たちが何を信じてステージに立つのかを問い返します。
ValkyrieはMDUに、勝敗では測れない価値を見せた。
MDUはValkyrieに、二人の芸術を限界まで引き上げる圧力を与えた。
触れた色が、互いの内側へ残っていく。
​染めるつもりだった者も、気づけば相手の色に染め返されている。​
メガスフィア・マッチとは、そんな相互作用のための巨大な舞台なのではないでしょうか。

おわりに——敗者の光を連れて、勝者は次へ進む

MDUはValkyrieに勝ちました。
トーナメントに残り、次の相手と戦い、また完璧なステージを見せるのでしょう。
けれど、彼らはもう、Valkyrieと出会う前とまったく同じMDUではありません。
舞珠の隣には、完璧でなくても自分を覚えていた友人がいる。
ジュイスの胸には、誰にも命じられていない「眩しさ」が残っている。
Valkyrieは敗退しました。
それでも彼らの芸術は、勝者のなかに異物のように残り、これから先の選択を静かに変えていく。
もし芸術が、作品そのものだけでなく、触れた誰かの生き方を変えることで未来へ残るものだとしたら。
​Valkyrieは本当に、何かを失ったのでしょうか。​
そして、勝ち進むたびに他者の光を持ち帰り、少しずつ変わっていくMDUは、最後にどんな「完璧」へ辿り着くのでしょうか。
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このトーナメントが決めるのは、最も強いユニットの名前だけではないのかもしれません。
誰が誰の傷へ触れ、誰の価値観を揺らし、そして誰のなかに消えないものを遺すのか。
勝者と敗者が入れ替わるたび、その答えが少しずつ積み上がっていく。
だから私は、次の試合が楽しみで仕方ありません。
​敗者の光を胸に抱いたまま、勝者がどこまで行けるのか。​
その旅の続きを、最後まで見届けたいと思います。
以上です。
とても長い上、大胆な仮説も含む考察に、最後までお付き合いいただきありがとうございました……!

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